送信者Aから受信者Bに記号0か1が送信されるとします。送信側で0が発生する確率が P(A=0)、1が発生する確率が P(A=1)、通信路を通って受信側に正しく届く確率が0.9とします。受信側Bで0を受信したとき、Aから送信された記号が0である確率はいくらでしょうか。ある集団の中で、ある感染症にかかっている人の割合が1/1000とします。ある検査によって、この感染症にかかっている人が陽性と判定される確率が99%、感染症にかかっていない人が陽性と判定される確率が1%とします。この検査結果が陽性のとき、この感染症にかかっている確率 P(感染|陽性)はいくらでしょうか。迷惑メールによくあらわれるキーワードがメールに含まれるかどうかによって迷惑メールかどうかを自動的に判定することができます。具体的には迷惑メールに、あるキーワードが含まれる確率 P(キーワード|迷惑)を求め、ベイズの定理を用いて P(迷惑|キーワード)を計算して、この値が高いメールを迷惑メールフォルダーに移動します。受信側Bに0が届く確率 P(B=0)は 0が発生して0として届く確率と1が発生して0として届く確率の和です。したがって P(B=0)=P(B=0|A=0) P(A=0)+P(B=0|A=1) P(A=1)=0.9 P(A=0)+0.1P(A=1)。ベイズの定理を用いると P(A=0|B=0)=P(B=0|A=0)P(A=0)/P(B=0)=0.9P(A=0)/P(B=0)。P(A=0)= 41 , P(A=1)= 43 の場合、 P(A=0|B=0)=0.9×( 41 )/(0.9× 41 +0.1× 43 )= 43 。すなわち、受信側Bで0を受信したとき、送信記号が0であった確率は 43 です。以上のように送信記号の発生頻度がわかっていれは、受信されたデータをもとに送信データがどのような記号であったかという確率が求まります。 P(A)のことを事前確率(prior)、P(A|B)のことを事後確率(posterior)と言います。ベイズの定理を用いると、結果Bをもとにして原因Aの確率を知ることができます。ベイズの定理の応用例(1)ベイズの定理の応用例(2)ベイズの定理の応用例(3)図1.15:10%の確率で誤りが発生する情報通信。図1.16:検査結果が陽性であった場合に感染している確率の計算方法。発生確率送信者A受信者BP (A=0) 0 0.90.10.10.90 P (A=1) 111/1000感染 P(感染|陽性)== 0.0902陽性999/1000非感染陰性0.99/10000.99/1000 + 0.01 × 999/10000.990.01事前確率事後確率練習:事後確率が検査の精度や事前確率にどのように依存するか考察しなさい。13
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