Ascent2022_coll
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電子計算機が登場して以来、これを人間の知的活動に適用する試みが行われてきました。チューリングは質問への回答が人間によるものか計算機によるものかが判定できない場合に、計算機は人工知能とみなすことができるというテスト(チューリングテスト)を考案しました。1958年にFrank Rosenblattは人間や生物の脳神経細胞(ニューロン)の働きを真似た素子を用いて人工知能を構築しようとしましたが、すぐにその限界が明らかになります。1980年代には特定分野の専門知識と計算機を用いた論理・推論によって回答するエキスパートシステムが構築されました。しかし、汎用性に欠け、広く利用されるには至りませんでした。他方、1980年代にニューラルネットワークの学習方法の研究が進みます。計算機の性能向上にも助けられて2010年代に入って、ニューラルネットワークが画像認識等ですぐれた性能を示し、様々な分野に適用されるようになりました人間や生物の脳神経細胞(ニューロン)は、右図のように細胞体から細長い軸索が伸びて、他のニューロンと結合しています。この軸索内を電気パルスが伝わり、情報を伝達します。あるニューロンに伝わってきた電気パルスが閾値を超えるとこのニューロンが発火して、他のニューロンに電気パルスを送り出します。このようなニューロンの働きをモデル化した図を図3.10に示します。入力を x1,x2, 結合の強さ(重み)を w1, w2 として w1x1+w2x2 >θ なら1が出力され、そうでなければ0が出力されるとします。ニューロンは入力 x に応じて出力の値が決まる関数 f(x)を用いて y=f(w1x1+w2x2-θ) のように表現できます。この関数 y=f(x) を活性化関数と呼びます。上記のように入力 x の正負によって出力が不連続に変わる場合の例を図3.11に示します。複数のニューロンを相互に結合することによって、入力に応じて様々な出力が可能なニューラルネットワークを構成することができます。ニューロンを複数の層に配置したネットワークを多層ニューラルネットワークと呼びます。人工知能 (Artificial Intelligencce: AI)の研究ニューロンの仕組みニューロンのモデル多層ニューラルネットワーク軸索細胞体ニューラルネットワークと深層学習ニューラルネットワークと深層学習発展画像認識等の分野で、人間の脳神経細胞の働きを模倣したニューラルネットワークが広く利用されるようになってきました。とくに、深層学習(ディープラーニング)は、アルファ碁などにも適用され、人間に打ち勝つには数十年かかると言われていた碁の世界でも人間を超えました。図3.9:神経細胞(ニューロン)の構造図3.10:ニューロンのモデル図3.11:活性化関数の例w1x2x1θy出力入力w2-0.501-0.50.50.50.50.50.7中間層入力層出力層yyxs1s21x-0.70.2x2w1x2x1θy出力入力w2-0.501-0.50.50.50.50.50.7中間層入力層出力層yyxs1s21x-0.70.2x228

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