計算機を用いた数値シミュレーションは、地上での実験が困難な天体
現象を研究する強力な手段となっています。計算機の性能向上に伴って
シミュレーション可能な対象も広がり、本格的な3次元計算が行われる
ようになってきました。シミュレーションにもとづいて観測結果を解釈
したり、新たな観測の提案を行う機会も増えています。しかしながら、
天体シミュレーションの教科書、大学・大学院での講義は未整備です。
そこで、数値天体物理学の導入教育を行い、シミュレーションの裾野を
広げることを目的として、昨年度は国立天文台と茨城大学で流体力学
方程式とPoisson方程式の数値解法を伝授するサマースクールが行われ
ました。今年度は千葉大学で流体・磁気流体シミュレーションをテーマ
としたサマースクールを開催します。
本サマースクールでは千葉大学総合メディア基盤センターを会場とし
て講義と実習を行います。教材としては、科学技術振興事業団(JST)
計算科学技術活用型特定研究開発推進事業課題「宇宙シミュレーション・
ネットラボラトリーシステムの開発」(代表:松元亮治)の研究開発の
一部として作成中の天体シミュレーション基本課題集を使用する予定です。
これは、点源爆発、太陽フレア、降着流とジェット等の天体(磁気)流体
現象に適用可能なシミュレーションコードと、初期条件、推奨パラメータ
セット、課題解説などを集めたものです。この教材を用いて、実際の研究
にも適用できる実践的なシミュレーション実習を行うことを目指していま
す。意欲ある大学院生、若手研究者の参加を歓迎します。
第1日 シミュレーション概観 [目標]シミュレーションが天体研究の強力な手段となっていること を理解する。また、パラメータ入力から結果のグラフィック 表示に至るまでのシミュレーションの流れを学ぶ。 [内容]イントロダクション(柴田) 差分法の基礎(松元) シミュレーション実習 第2日 数値MHD差分法(1) [目標]差分法による流体・磁気流体方程式の解法について学ぶ。 計算モデル(初期条件、格子点等)を変更して、再コンパイル、 実行、結果の解析ができるようにする。 [内容]差分法によるシステム方程式の数値解法、衝撃波管問題 シミュレーション結果の解析方法(松元) 基本課題解説と実習(桑原、福田、他) 第3日 数値MHD差分法(2) [目標]シミュレーションコードの変更、モジュールのつけかえなどが できるようにする。また、磁気流体特有の解法があることを 理解する。 [内容]近似的リーマン解法(山下、福田) CIP-MOCCTスキームの紹介(工藤) 熱伝導数値MHD解法(横山) 基本課題解説と実習 第4日 High-Performance Computing [目標]ベクトル・並列計算機向きのプログラミング技法と多次元 データの可視化について基礎的な知識を与える。 [内容]ベクトル化、並列化、可視化方法(林満) 選択課題の完成、レポート作成 初日は12時に受付を開始し、午後1時に開講します。第2日目からは 午前9時30分から講義を行います。第3日目の夕方に懇親会を開きます。 演習室の計算機端末は午前9時から午後9時まで使用できます。サーバー 計算機は千葉大学総合メディア基盤センターのSun Enterprise 10000 (64CPU、44GFLOPS)です。
[参加資格] 大学院生以上 [参加費] 懇親会会費(実費、金額未定)を除き、参加費は無料です。 [旅費補助] 財源はありません。 [宿舎] 千葉大学ゲストハウスと松韻会館に合計15名程度(1部屋最大2名) 宿泊可能です。宿泊料金は1泊2000円〜3000円です。 [交通手段] 千葉大学はJR総武線西千葉駅前にあります。以下のURLを参照して ください。http://www.imit.chiba-u.ac.jp/outlines/map/index.html [定員] 40名。定員になりしだい、受付を終了します。 [申込方法] 参加申込書に記入して summer_apply_01@c.chiba-u.ac.jp まで メールで送ってください。定員に満たない場合も7月31日(火)で受付を 終了します。