物理を理解しようと勉強していると出てくる「理論的には結構な確度でこうなっているはずだけど、まだ実験的には確かめられていない」という話に決着をつけるために考えを巡らせるのが好きなようです。古い言い方をすれば、通常科学としての決定的な論証を進めたいのだと思います。付随して、実験的に確かめるには何をしたらいいのか、そもそも確かめるとは物理の文脈で何を意味しているのかを考えるのも好きです。後から考えると、私が大学院に進学した2007年はまだ重力波が発見されておらず、とはいえその存在は間違いないと思っていたので、この興味にちょうど合っていました。(他にHiggs粒子も見つかっていませんでしたが、こちらは当時の私にはそれほど確度が高いと思えていませんでした。)
今のところ、ブラックホールや中性子星といった強重力天体の性質、特に中性子星に関してはその構成要素である高密度物質の性質に興味を持って研究をしています。将来的には、重力崩壊によるブラックホールの形成を重力波で捉えることができないか考えています。他にも例えば、暗黒物質の性質の探求は今後の重力波天文学における一つの重要な研究対象で、超大質量ブラックホールとの関係もあって注目しています。野心的には、生きているうちにHawking放射の観測的証拠が得られると面白いなと思っています(がアイデアはありません)。重力波自身、言い換えれば重力の動的な性質の深い理解にも興味があります。
特にこだわりはなく、むしろ使える手口を増やすことが研究動機の一つになっています。学部生の頃は(重力波の)実験をやりたいと思っていて、色々あって理論分野に進んだことは自分にとって前向きだったと思いますが、今でも能力さえ及ぶなら理論・実験等々を問わずなんでもやりたいと思っています。宇宙や天体を研究対象としているのも、究極的には物理を理解するための一つの手段という立場で、他分野の視点にも積極的な興味があります。強いて言えば、試行回数を増やしづらい手法や、他の研究者が追確認しづらい手法に頼るのはなるべく避けたいと思っています。
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